
◇ラムサール条約湿地 藤前干潟の保全と活用を目指して
名古屋市の南、伊勢湾に面した場所に都市部に残された貴重な自然・藤前干潟があります。
この藤前干潟は、2002年11月に、日本有数の渡り鳥の渡来地としてラムサール条約の 「国際的に重要な湿地」として登録されました。
◇藤前干潟とは
「貴重な都市部の干潟」
藤前干潟は、伊勢湾に流れ込む庄内川、新川、日光川の河口に広がる砂・泥から成る干潟を含む区域で、さらに、庄内川河口干潟、新川河口干潟、そして藤前地先干潟の3つの干潟に分けられます。
これら3つの干潟を含む323haの区域が2002年11月18日に「藤前干潟」としてラムサール条約に登録されました。
(以下、明記されている「藤前干潟」とは、この区域のことを言います。)
藤前干潟は、名古屋市の南西に位置し、大都市部としては貴重な自然を残している場所となっています。
「干潟の状況」
藤前干潟の基準海水面0m以上の区域を右図に示します。
藤前干潟の区域における水深は0~4m、潮汐の変化は平均水位で+1.21~-1.36mとなっていて、海水と河川水が混じり合っている場所です。
区域の東側、すなわち庄内川河口干潟の方が地盤が少し高く、干潟が見える機会が多くなります。
一方、区域の西側は、干出した時の干潟の広さを実感することができます。
藤前干潟は川によって上流から運ばれてきた土砂が堆積したものです。
ですから、大雨で川の水量が増えた時など、自然環境の変化によって、少しずつ干潟の形は変わっているのです。
◇ラムサール条約と藤前干潟
「ラムサール条約とは」
・1971(昭和46)年にイランのラムサールで開催された「湿地及び水鳥の保全のための国際会議」において、「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」が採択されました。
・この条約は会議の開催地にちなみ「ラムサール条約」と呼ばれています。
その後、この条約は7ヶ国が締約国になり、4ヶ月後の1975(昭和50)年12月21日に発効しました。
「条約の内容」
・この条約は、特に水鳥の生息地等として国際的に重要な湿地と、そこに生息・生育する動植物の保全を促進することを目的としています。
条約における「湿地」の対象は広く、湖沼、浅い海、河川、干潟、沼などの自然の湿地のほか、水田などの人工的な湿地も含めて水に関係する場所のほとんどが対象となります。
また、各締約国は、その領域内にある湿地を1ヵ所以上指定し、条約事務局が登録するとともに、湿地及びその動植物、特に水鳥の保全促進のために各締約国がとるべき措置等について規定されています。
2006年3月8日現在、締約国は150ヵ国、条約湿地数は1,591ヵ所、面積の合計は134百万ヘクタールとなっています。
「締約国会議」
・ほぼ3年ごとに締約国会議が開催され、条約の実施などについて協議しています。
これまでに開催された締約国会議の概要は以下のとおりです。
第 1回 1980年 イタリア(カリアリ) 11/24~29
第 2回 1984年 オランダ(フローニンヘン 5/7~12
第 3回 1987年 カナダ(レジャイナ) 5/28~6/3
第 4回 1990年 スイス(モントレー) 6/27~7/4
第 5回 1993年 日本(札幌) 9/6~16
第 6回 1996年 オーストラリア(ブリスベン) 3/18~27
第 7回 1999年 コスタリカ(サンホセ) 5/10~18
第 8回 2002年 スペイン(ヴァレンシア) 11/18~26
第 9回 2005年 ウガンダ 11/8~15
第10回 2008年 韓国(昌原) 10/28~11/4
「日本の状況」
・日本は、1980(昭和55)年に締約国となり、その際、釧路湿原を条約湿地として指定し、ラムサール条約に登録されました。
その後、順次湿地が登録され、2008年11月17日現在で、国内の条約湿地は37カ所、131,027haとなっています。
「条約湿地の要件」
・日本におけるラムサール条約湿地の選定は、以下の要件を満たす場所について行っています。
1、国際的に重要な湿地(ラムサール条約で示された基準に該当していること)
2、国指定鳥獣保護区特別保護地区等の地域指定により、将来にわたり自然環境の保全が図られていること
3、地元自治体等から登録への賛意が得られていること
「条約湿地の要件」
・ラムサール条約では、湿地保全のあり方に「賢明な利用(wise use)」という原則があります。
これは、良好な湿地環境を次代に受け継いでいきながら、湿地の有形・無形の資源を持続的に利用・活用していくことを意味します。
また、湿地保全のあり方として地域の人々の参加が求められています。
このように、湿地保全については「賢明な利用」「市民参加」が原則とされているほか、その具体的な手法は各湿地にまかされています。
◇藤前干潟の生き物
「渡り鳥の中継地」
・藤前干潟は、東アジア-オーストラリア間の渡り鳥の飛行経路上にあり、南北に移動する渡り鳥たちの重要な中継地になっています。
特に、春・秋の渡りの季節には、シギ・チドリ類が多くやってきます。
「渡り鳥とは」
・日本で見られる鳥の多くは、季節によって移動しています。
山地と平地、北海道と本州、日本と海外など、さまざまに移動する鳥がいますが、このうち日本と海外とを移動する鳥を「渡り鳥」と呼んでいます。
また、移動してくる季節や理由などによって渡り鳥の種類は以下のように呼ぶこともあります。
しかし、渡り鳥の生態については明らかでない部分も多く、これからの研究課題にもなっています。
☆夏鳥
春から秋にかけて南方から渡ってきて子育てをし、秋に南に渡っていきます。
(コチドリ・コアジサシ・ヒクイナなど)
☆冬鳥
秋から冬にかけて北方から渡ってきて冬を過ごし、春に北に渡っていきます。
(マガモ・コガモ・オオハクチョウなど)
☆旅鳥
北方で繁殖し、南方で越冬するための渡りの途中に、採餌や休息のため立ち寄ります。
(キアシシギ・ハマシギ・トウネンなど)
「藤前干潟に来る鳥たち」
・ここ数年、藤前干潟では、トウネン、ダイゼン、チュウシャクシギ、キアシシギ、ソリハシシギ、シロチドリなどの鳥が観察されています。
シギ・チドリ類の他にも冬季にはカモ類が渡来し越冬します。
また、ダイサギ、コサギなどのサギ類、ユリカモメ、コアジサシなどのカモメ類、ミサゴなどの猛禽類、カワウなども渡来または生息しています。
☆チュウシャクシギ

☆ダイゼン

☆ダイサギ

☆ユリカモメ

☆カワウ

「前干潟の生き物」
・藤前干潟には、ゴカイ、アナジャコ、オサガニ、ソトオリガイ、ヤマトシジミなどの底生生物や、ヒメハゼ、エドハゼ、ボラ、イシガレイなどの魚介類が生息しており、鳥たちの餌にもなっています。
☆ゴカイ

☆アナジャコ

☆ヤマトオサガニ

☆ソトオリガイ

☆ヤマトシジミ

◇藤前干潟の保全と活用
「保全活用拠点の整備」
・藤前干潟は国際的に重要な湿地であり、都市部における貴重な自然としても、将来にわたって守っていくことが大切です。
また、ただ守っていくだけでなく、環境学習の場や市民の憩いの場などとして、今後、ラムサール条約における「賢明な利用」(ワイズユース)を目指し、積極的な活用を図っていく必要があります。
2005年3月には、藤前干潟における環境学習や調査の場として、稲永ビジターセンター、藤前干潟活動センターが環境省によって整備されました。
「藤前干潟協議会の設置」
・2002年(平成14)12月に藤前干潟の保全、活用のあり方について、環境省が主催する「藤前干潟保全活用構想検討会」における検討内容がとりまとめられました。
この中では、保全、活用の推進体制について、市民、NGO、専門家、関係行政機関などが協議し、連携、協働するシステムの構築などが提案されています。
これを受け、2005年3月には、藤前干潟協議会が設置され、名古屋市も参加しています。
※掲載致しました内容は、平成22年4月19日現在の内容となります。
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